意外と知らない「給与収入」と「所得」の大きな差
「年収○○万円」は税込み額、実際に使えるお金はもっと少ない
こんにちは。社会保険労務士 佐佐木由美子です。私たちが日ごろ何気なく使っている「収入」という言葉。「所得」と同じ意味合いで使っている人もいるようですが、収入と所得とはまったく違うものです。今回は、その違いを確認しておきましょう。
手取り額は覚えているが……
社会保険の手続きのため、「月収を教えてください」と、ある会社関係者にお願いしたところ、金額に端数があったので再度確認をしたら、月収ではなく「手取り額」だった、というエピソードがあります。
毎月のように給与をもらっていても、収入と所得の違いを普段は意識することは、ほとんどありませんよね? とりあえず、給与がいくら振り込まれるか、という手取り額を意識している人が多いでしょう。
しかし、知っておいたほうが良い場面というのが、今後出てくるかもしれません。例えば、ちょっとした副業をする場合。あるいは、家族を扶養したりする場合など。税金や社会保険のことは、普段会社にお任せであっても、時として自分で考えて行動しなければならないケースもあります。
「給与収入」と「所得」の違い
まず、「給与収入」から確認してみましょう。給与を受け取っている会社員の場合、月収は毎月の給与の総支給額を指し、所得税や社会保険料などが天引きされる前の金額をいいます。「年収」という場合は、年間の給与と賞与の総額をいいます。例えば、給与が20万円で、ボーナスが60万円の場合、年収300万円となります。
手取り額は、所得税や住民税などの税金や社会保険料、欠勤控除などが天引きされた後の金額で、実際に私たちが使えるお金といえます。
ちなみに、「結婚相手は、年収○○万円以上」という場合、税込み額となるために、実際に使える額はもっと少なくなる、ということです。
一方、「給与所得」は、給与(総支給額)から、「必要経費」を引いたものをいいます。会社員の場合、給与を得るためにどのくらいの経費がかかったのかを計算するのは、なかなか大変ですよね。そこで、給与収入に基づき一定の計算式により、「給与所得控除額」があらかじめ決められています。
平成28年分 給与所得控除額

国税庁HPより抜粋
この給与所得控除額は、経費として実際に使ったかどうかにかかわらず控除されるものです。年間所得を見るときは、1月から12月までの1年間で考えます。毎月の給与から所得税が引かれていますが、これは暫定的なもので、1年間の終わりの最後の給与で「年末調整」を行い、所得税額が確定します。
例えば、年収300万の場合、給与所得控除額は、上記の計算式から108万円になります。300万円から108万円を差し引いた、192万円が年間の給与所得となるわけです。年収とまったくかけ離れた金額になることを、これでお分かりいただけたのではないでしょうか。
こうして計算された年間所得に、社会保険料や扶養控除などの各種控除が引かれて課税給与所得額が算出され、それに税率等の計算をすることで税額が決まる仕組みになっています。少々ややこしいですが、所得は税金を計算するうえで、決め手となるものだと覚えておいてください。
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佐佐木由美子
プロフィール
佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロン(サロン・ド・グレース)を主宰。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。
働く女性のためのグレース・プロジェクト / グレース・パートナーズ社労士事務所 公式サイト / 佐佐木由美子 公式ブログ