みんなの金融リテラシー

金融リテラシー教育教材「キャッシュレス社会を考える」

主に中高生向けに、来たるキャッシュレス社会に向けて、実際の授業で使用できるツールを紹介しています。

「分かったフリ」してない? 円高・円安ってこういうこと

「1ドル125円」の為替レートが「1ドル100円」になったら、これは円高? 円安?

夏の休暇を前に、海外旅行の計画をしている人もいるでしょう。

私のところにも、海外旅行計画を立てているご相談者の方がいらっしゃいます。お話をしていると、「普段は分かったふりして聞いているけれど……実は、円高・円安っていう意味がよく分からないんです。でも、いまさら聞けなくて……」という人がたくさんいらっしゃいます。

その使い方は、大きく「貯蓄」と「支払い」の2つです。

ただ、お金を預けるだけが「貯蓄」ではない

イギリスのEU離脱もあり、為替が動いています。今回は、夏の海外旅行シーズンを前に、円高・円安のポイントをお伝えしましょう。

ポイントは一つだけ。「金額ではなく、価値で考える」ということです。

例えば、あなたがこの夏、アメリカに海外旅行に行くと想像してください。日本円はアメリカでは使えませんから、日本円をドルに交換する必要があります。その交換の際に、あなたが1ドルをもらうために日本円で支払う円の金額が為替レートです。

為替レートは、その国の経済力によっても変わりますし、国そのものの実力に変化がなくても、他の国に比べたときの魅力によっても変わります。また円をドルに換えることを、金融の世界では「円を売ってドルを買う」と表現しま

す。逆にドルを円に換えることを、「ドルを売って円を買う」と表現します。交換する場所には「TTS」(Telegraphic Transfer Selling Rateの略で、円を外貨に交換するときのレート)や「TTB」(Telegraphic Transfer Buying Rateの略で、外貨を円に交換するときのレート)という表示がされていて、この金額で交換します。

2016年7月6日現在の為替レート(TTS)は1ドル約100円です。ということは、約100円を支払ったら1ドルが手に入るわけですね。

ちなみに、1年前の為替レートはいくらぐらいだったかというと……1ドル約125円です。つまり、昨年あなたが海外旅行に行ったとしたら、1ドルを手に入れるために125円を払わなければならなかったのです。

さて、ここで問題です。

昨年よりも少ない金額(円)でドルを手に入れる

Q. 昨年1ドル125円だった為替レートが、今年は1ドル100円になりました。これは「円高」でしょうか? それとも「円安」でしょうか?

答えは「円高」。正確に言うと、「円高ドル安」です。

さて、これから「円高と円安のポイントは、金額ではなく、価値で考える」ということを詳しく説明していきますね。

1ドル125円と1ドル100円を比べると、125円が100円になっているので、日本円の金額が下がっていて、円が安くなったように思ってしまいます。でも、それは錯覚! ポイントは「価値」だから、考え方を変えるのです。

為替レートはあくまでも、お金とお金の交換ですから、価値が同じでないと交換は成立しません。

昨年は1ドルを手に入れるために日本円で125円支払わないと1ドルがもらえなかった。それなのに今年は、100円出せば1ドルがもらえるわけです。昨年よりも少ないお金しか払っていないのに、同じものがもらえます。

つまり、昨年に比べて、円の「価値が高くなった」からこそ、今年は昨年よりも少ない金額でドルが手に入ったのです。

このように、価値で考えると、「昨年は1ドルを手に入れるために125円支払わなければならなかったけれど、今年は、円の価値が高くなったからこそ、去年より少ない額の100円と1ドルを交換することができる」ということになるのです。

1ドル125円が1ドル100円になったら円高ドル安、その反対に、1ドル100円が1ドル125円になったら円安ドル高です。

ただし、決して100円を基準に円高・円安と判断するわけではないので、気を付けてくださいね。

クレジット

文/前野彩

プロフィール

前野彩(まえの・あや)

Cras代表取締役。FPオフィス will代表。大阪在住のファイナンシャル・プランナー。中学校・高校の保健室の先生を経て、結婚、退職、住宅購入、加入保険会社の破たんを経てFPに転身。自らの住宅ローンで800万円、生命保険で1000万円の見直しを行った実績を持つ。「お金の安心と可能性をかたちにし、心の自立と輝く明日をつくる」ことを理念に「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を働く女性や子育て世帯に伝えている。講演やテレビでも活躍中。著書多数。新著に『本気で家計を変えたいあなたへ —書き込む“お金のワークブック”』(日本経済新聞出版社)、『家計のプロ直伝!ふるさと納税新活用術』(マキノ出版)、『危うくムダなお金を払うところでした』(産経新聞出版)。