家を「買う・借りる」あなたにはどっちが合う? おトクの目安「200倍の法則」とは?
「買うべきか、借りるべきか」の見分け方
2015年9月8日
こんにちは。ファイナンシャルプランナーの高山一恵です。生きていくうえで絶対欠かせないのが、お金。毎日使っている身近なものだけど、意外に知らないことも多いのでは。この連載では、きちんと生活するためにぜひ知っておきたい「お金の超キホン」を、わかりやすくご紹介します。 今回は、「家は、賃貸と購入、どっちがいいか?」を考えます。! これは多くの人が迷うテーマ。金額も大きいだけに、慎重に考えたいところです。どう考えたらいいか、キホンをお伝えします。また、「買った方が得か?」を大まかに判断する目安となる「200倍の法則」もご紹介しましょう。
登場人物
桜子:
新入社員
潤 :
入社3年目
絢香:
入社7年目の29歳
桜子: 通勤の負担を少しでも減らしたくて会社の近くにアパートを借りたんですけど、家賃高いですよね。
潤:
そうだよね。僕も通勤に便利な場所に借りてるけど、毎月の家賃の負担が重いんだよね…。
家賃払ってても結局自分の家になるわけじゃないし、いっそのこと買ってしまった方がいいのかなって思うんだけど、どうなんですかね?
絢香:
昔から賃貸がいいのか、買った方がいいのかって、よく議論されるテーマよね。お金の雑誌などでもよく特集されてるわ。
でも、結局のところ、(1)これから先、何年生きるかがわからない、(2)将来の住宅価格がどう動くかがわからない、(3)マイホームであることに感じる価値が人によって異なる、ということがあるので、どちらがお得かは一概にはいえないのよね。
潤: 確かにそうですよね。賃貸、購入それぞれにメリット・デメリットがあるし。
桜子:
賃貸だと、ライフスタイルや家族構成に応じて、住むエリアや間取りを臨機応変に変えたり、古くなったら新しい物件に住み替えができたりしますよね。
でも、潤先輩が言うように、家賃を払い続けていても自分のものにならないし、自分の好きなように間取りを変えることはできないし、一生家賃を払っていかなくてはいけない…というデメリットもありますよね。
絢香:
持ち家は、自分の資産になるところがメリットよね。それに、ローン払い終わってしまえば住居費用がかからないのもいいわよね。
ただし、持ち家だってローンを払い終わったらお金の負担が全くなくなるかというとそんなことないのよね。何十年も住んでいれば修理しなくてはならないし、税金などの固定資産はかかるし、家族の構成が変わればリフォームだって必要になるから、そのお金が必要になるのよね。
潤: 実家は持ち家なんですけど、結構古くなってきてリフォームしてますよ。親も歳をとってきてバリアフリーにしたみたいで、300万円くらいかかってました。
桜子: わー、リフォーム費用って結構かかるんですね。
絢香: それぞれにメリット・デメリットはあるけれど、買うべきか、借りるべきかを決めなければならない場面はあるわよね。人生最大の買い物で失敗しないよう、マイホームを買う前にポイントを押さえておきましょう。
絢香:
まず、賃貸と購入、それぞれにかかるお金をまとめてみましょう。
大まかなところをまとめると、次のとおりね。
潤: それぞれ、家賃や購入金額のほかに、かかるものが多いんですね。
絢香:
そうなの。
例えば、<賃貸で家賃10万円の場合>と<2000万円の物件>の場合を考えてみましょう。
ローンの期間を35年、金利2%、頭金400万円として…。
賃貸の場合
-
<最初にかかる費用>
敷金・20万円+礼金・10万円=30万円
<家賃(35年)> 10万円×12(カ月)×35(年)=4200万円
<更新費用(2年に1度)> 10万円×17回=170万円
計・4400万円
購入の場合
-
<最初にかかる費用>
-
頭金・400万円+諸経費(物件価格の7%と仮定)・140万円=540万円
-
約5万3000円×12(カ月)×35(年)=2226万円
-
2万5000円(1カ月)×12×35=1050万円
潤: 買うときの諸経費って、こんなにかかるんですね。
絢香: そうなの。保証料や火災保険、中古だと仲介手数料…。あと、ここに挙がっているもののほかにも、建物が古くなったらリフォームなどのメンテナンスをする必要があるし、後々まとまったお金が必要になる場合もあるわね。
桜子: 金額だけ見ると、どちらも大きなお金がかかることは変わらないけど、購入した方がお得な感じはしますね。
絢香: そうね。ただ、年月が経つと、修繕積立金が高くなる、ということも多いわね。それと、今は住宅ローンの金利が低いから2%で仮定して、返済額が少なめになってるけど、これだって変わる可能性はあるわよね。これが1%違ったら、300万円以上、返済額は変わってくるのよ。家賃も、ずっと同じとは限らないわけだし。先々の世の中の状況がどうなっているのかはわからないから、あくまで今の時点での想定ね。
潤: あと、これは35年間分だけど、寿命を考えると、その後も生活は続くわけですよね。35歳で買うとしたら、その35年後は70歳かあ…。その間、同じところに住み続けるのがいいかどうかはわからないですよね。
桜子: 結婚したら、子どもができたら…、ということも考えちゃいますよね。転勤もあるかもしれないし。
絢香: そうよね。「買う」場合も、選択肢は膨大よね。マンションか一戸建てか。中古か新築か。そして将来「売る」可能性も考えるとなると、場所、間取り、築年数…などなど、要素はたくさんあるわよね。間取りなんかは流行もあるし。
潤: 選ぶのは楽しそうですけどね。ともかく、買うことを考えるなら、まず頭金を貯めなきゃ! ってことですよね。
絢香:
そのとおり。今は頭金なしでも買えます、とアピールしている物件も少なくないけど、やっぱりある程度、頭金がないと、ローンの返済金額が大きくなってしまうわよね。頭金とローン返済額を計算して、無理のない買い物をしないと、後々大変なことになっちゃうから。銀行のサイトなどでシュミレーションができるから、頭金や金利、返済期間など、いろいろ条件を変えて試してみるといいわよ。
あと、買うなら、やっぱり少しでも割安な価格で購入したいわよね。返済額も少なくなるわけだし。
潤: 割安で買うってどうやって買うんですか? 家の価格が高いか安いかなんてわかりませんよ。スーパーの特売品ならわかるけど(笑)
絢香:
それは偉いわね~(笑)。その物件を価格という観点から購入してよいかどうかを判断するのに、目安として知っておいてほしいのが「200倍の法則」というもの。参考までに紹介するわね。
これは、不動産の価格を、「その物件に賃貸で住んだ場合の賃料」と比較して、「買った方が得か? 借りた方が得か?」を判断するひとつの基準なの。
桜子: へぇ!、そんな基準があるんですね!
絢香: その物件の販売価格が、同等のマンション(一戸建て)の家賃相場の200倍以内であれば、その物件は「買った方が得」だし、200倍以上であれば、「借りた方が得」ということになるの。家賃相場は住宅情報誌やインターネットで調べることができるわよ。
「200倍の法則」とは
<例>
-
購入したいマンションが2000万円の場合
同程度の物件の家賃相場…13万円
13(万円)×200=2600(万円)
⇒ 購入したいマンションは、家賃相場の200倍である「2600万円」以下なので、「買った方がトク」
「200倍」という基準値は、不動産投資の経験則から導き出されたもので、「利回り6%」と呼ばれているもの。利回りは、物件価格に対して、家賃収入がどれくらいあるか、という指標のこと。
例えば、1000万円の物件を買って、年間家賃収入が100万円あるとすると、利回りは
100万円(家賃収入)÷1000万円(物件の購入金額)=0.1 ⇒10%
-
2000万円の物件だと、家賃10万円なら年間の家賃収入は120万円なので
120万円(家賃収入)÷2000万円(物件の購入金額)0.06 ⇒6%(利回り)
-
この「利回り6%」のときの物件価格が、ちょうど家賃の200倍(10万円×200=2000万円)に当たる
桜子: なるほど! これ知ってると便利ですね!
絢香:
目安にはなるわよね。一般的には、新築の物件は家賃相場の300倍程度で売り出されていることが多いので、お得物件はそうそう多くはないかもしれないけど、中古だと意外とお得物件だったりすることもあるから、リサーチしてみることは必要よ。
「家」については、人によって事情も求めるものも違うから、一概に「こっちがいい」という正解はなくて、最終的には「自分に合っているのは何か」になるわね。よーく考えてみてね。
◎Kazue先生の今回のポイント◎

プロフィール

ファイナンシャルプランナー
高山一恵さん
エフピーウーマン所属ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)。2002年にファイナンシャルプランナーの資格を取得したのを機にお金との正しい付き合い方を啓蒙する魅力に目覚める。2005年4月に創業メンバーとして「女性のためのお金の総合クリニック」株式会社エフピーウーマンの設立に参画。現在、同社のメイン講師として全国で講演活動を行い、人生に不可欠なお金の知識を伝えている。雑誌や新聞での連載をはじめ、テレビ・ラジオにも出演するなど精力的に活動し、明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書に『35歳までにはぜったい知っておきたい お金のきほん』(アスペクト)など。エフピーウーマンHP、オフィシャルブログ「お金を人生の味方につけるお金の教養レッスン」、「お金の教養が身につく マネーセミナー」(受講料無料)。