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出発前に読んでほしい! 海外旅行のお金のはなし

楽しい海外旅行! その前に知っておくと得することがあります。

もうすぐゴールデンウィーク。海外旅行を予定している人も多いのではないでしょうか。今回は海外旅行前に知っておきたいマネーの知識をお伝えします。旅を楽しむには、安心も必要ですよ。

みなさんこんにちは、経済エッセイストの井戸美枝です。お金にまつわる“知っておきたい、ちょっといい話”、第3回は「海外旅行」についてお話しましょう。

みなさんは海外旅行に行かれたことはありますか?

法務省入国管理局によると、平成27年の日本人海外旅行者数はのべ1621万人でした。私たち日本人にとって、海外旅行は身近なものだといえます。

当たり前ですが、日本では当たり前のことが海外では通用しないことも多々あります。それが旅の醍醐味でもありますよね。

今回は、海外旅行へ行く時、知っておくと安心できるマネー術をご紹介しましょう。

ここで、海外旅行にまつわるお金のキホンチェック!クイズに答えてみてくださいね。

どれだけ知ってる? 海外旅行のマネー編

問題1
海外でもそのまま使える、銀行口座から直接引き落とされるカードはどれでしょう?
1.デビットカード
2.クレジットカード
3.プリペイドカード

問題2
海外旅行保険でカバーされない範囲はどれでしょう?
1.ホテルの備品を壊したときの損害賠償
2.飛行機が遅延して、ホテルに宿泊しなければならなくなったときの宿泊費
3.カメラを紛失したときの補償

問題3
病気やケガをして、現地の病院で治療を受けました。治療費はどうなるでしょう?
1.現地の治療費
2.現地の治療費−日本で同じ病気になった場合の治療費
3.現地の治療費+日本で同じ病気になった場合の治療費

答え合わせをしてみましょう。

問題1

答えは1.デビットカードです。

デビットカードは、銀行の預金口座と紐付けられた決済用カードのことで、決済すると代金が即座に口座から引き落とされます。口座残高がそのまま利用限度額なので、使い過ぎる心配がありません。使い方は、クレジットカードと同じ要領です。

また、Visaのデビットカードでは海外のATMで現地通貨を引き出すことができます。

問題2

答えは3.カメラを紛失したときの補償です。

クレジットカードには付帯の保険があるのを知っていますか?

海外旅行保険にもさまざまなものがありますが、一般的なもので主に補償される内容は次のようなものがあります。

海外旅行に行く前に自分のカードの補償内容を確認し、そのうえで海外旅行保険に加入しておくと安心でしょう。

=カコミ
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  • 病気やケガの死亡保障・後遺障害
  • 病気やけがの治療費用
  • 賠償責任(誤って他人にケガをさせたり、他人の物を壊した場合の損害賠償補償)
  • 携行品損害(バック、カメラ、衣類、腕時計など)の携行品の破損や盗難の補償
  • 救援者費用(捜索救助費用や家族が現地に行く交通費・滞在費用などの補償)
  • 航空機寄託手荷物遅延費用(手荷物が届かない場合の身の回り品を購入費の補償など)
  • 航空機遅延費用(出発遅延・欠航・運休により代替機を利用できない場合の宿泊費などの補償)
  • 緊急一時帰国費用
  • 入院一時金(病気やケガで2日以上続けて入院した場合の一時金)

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カメラを紛失した場合は、残念ながら補償の対象外となることが多いでしょう。もしもこれが紛失ではなく盗難であった場合は補償されることもあります。

問題3

答えは2.現地の治療費?日本で同じ病気になった場合の治療費です。

海外で病気やケガをして現地の病院で治療を受けた場合、日本に帰国してから申請をすれば、支払った医療費の一部が支給される「海外療養費支給制度」という制度があります。

それならば安心…という訳ではありません。

治療費が日本より高い国に行く場合は、日本での治療費との差額が大きくなり自己負担額が増します。

また、海外療養費の支給対象となるのは、日本国内で健康保険適用となっている医療行為のみです。個室などの差額ベッド代、美容整形やインプラントなど、日本国内で保険適用となっていない医療行為や薬が使用された場合は給付の対象になりません。治療目的の渡航による医療費も支給対象外となります。

ですので、海外療養費制度を補填するという意味で、海外旅行保険に加入しておくとさらに安心です。

問題2の保険と合わせて、旅行前にいま一度、ご自身のクレジットカードに海外旅行保険がついているかを確認しておきましょう。

どうする? 海外旅行のお金の管理?

海外旅行のお金の管理は、悩ましいですよね。

支払い手段にはクレジットカード、デビットカード、現金などいくつかありますが、旅行へ何日行くのか、現地での予算はいくらなのか、旅行先でクレジットカードは普及しているのか…それぞれの予定に合わせて、カードと現金の組み合わせを調整しましょう。

クレジットカード

クレジットカードはやはり現金を持ち歩かずにすむので安心です。アメリカやヨーロッパ諸国では、クレジットカードの普及率が高いので持っていきましょう。意外なところでは、ホテルのチェックイン時などに、身分証明書の役割を果たしたりもします。海外旅行保険が付帯されているクレジットカードもあります。

デビットカード

(問題1)でも述べましたが、加盟店であれば、クレジットカードと同じように使えますし、現地のATMで自分の口座から現地の通貨を引き出すことができるため両替の手間が省けます。キャッシュバックやポイントの付与がある場合もあり、*現金で支払うよりお得なことも。

また、自身の預金口座から支払いをしているだけですので、入会審査はなく、預金口座さえあれば16歳以上の高校生から持つことができます。*預金残高の範囲内でしか利用することができませんので、使い過ぎる心配もありません。(*特典および発行条件等は発行金融機関によって異なります。詳しくは各発行金融機関のホームページ等でご確認ください。)

現金

小さな個人商店やファストフードでの少額支払い時にカードが使えないこともあります。いわゆるチップを現金で渡すこともありますよね。

ですので、盗難などの安全面を考えて必要な分だけを持ち歩きましょう。高額紙幣を受け取らないお店もあるので、金額の小さい紙幣も用意しておくと便利です。

このように、安全性・利便性を踏まえて、カードと現金を組み合わせてお金を準備しましょう。

また、両替レートを気にしすぎると時間と労力が浪費されます。数日から数週間ほどの短期旅行では、ある程度割り切って旅行を楽しみましょう。

文/井戸美枝 イラスト/いいあい

この記事は、日経ウーマンオンライン(http://wol.nikkeibp.co.jp/)に 2016年4月27日に掲載されたものです。無断複製・転載を禁じます。(C)日経BP社