失業は他人事ではない ライフプランとお金のはなし
万が一のときのために、さまざまなセーフティーネットを知っておきましょう。
会社に勤めている以上、多かれ少なかれ背負うリスク、「失業」。想像したくありませんが、「もしも」のときあなたを救ってくれるのは「確かな知識」です。
みなさんこんにちは、経済エッセイストの井戸美枝です。お金にまつわる“知っておきたい、ちょっといい話”、第6回は「失業にまつわるライフプランとお金」についてお話しましょう。
あまり想像したくはありませんが、会社が倒産したり、人員削減ためののリストラにあったり…会社に勤めている以上、多かれ少なかれ失業するリスクはあります。

総務省によると、2015年の完全失業者数は222万人、完全失業率は3.4%でした。また、東京商工リサーチの調査では、2015年の全国企業倒産(負債総額1000万円以上)は8812件となっています。
日本では「失業したらすぐに路頭に迷う」なんてことはありません。失業保険など色々なセーフティーネットが用意されています。こんな仕組みがあって、こう手続きすれば良いんだな…など、あらかじめ知っておけば、職を失ったとき焦らずにすむかもしれません。
そこで今回は、万が一失業してしまったときのマネープランについて考えてみましょう。
それでは、失業にまつわるお金のキホンチェック! クイズに答えてみてくださいね。
問題1
失業保険がもらえる人は、次のうちどれでしょうか?
1.1年以上会社に勤めた人
2.会社を辞めて留学する人
3.次の就職先が決まっている人
問題2
勤めている会社の将来性が不安です。そこで、会社に勤めながら介護士の資格を取得しようと思いました。利用できる制度はどれでしょうか?
1.技能取得手当
2.公共職業訓練
3.教育訓練給付金
問題3
失業して収入がなくても、払わなければいけない税金はどれでしょうか?
1.住民税
2.所得税
3.法人税
答えあわせをしてみましょう!
問題1
答えは1.1年以上会社に勤めた人です。
前回の連載でもお話ししましたが、失業保険を受け取るためには、いくつかの条件があります。
---カコミ---------------------------------------
- 12ヶ月以上雇用保険に加入していること
- 働く意思があること(求職活動を行っていること)
- 65歳未満であること
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などです。
単に失業しただけでは、失業保険はもらえません。働く意思があり求職活動をしているのに就職できない…という場合にもらえるものなんですね。
ですので、就職する意思のない「2.会社を辞めて留学する人」や「3.次の就職先が決まっている人」は対象外です。
問題2
答えは3.教育訓練給付金です。
教育訓練給付金は、資格を取得するため、技術を学ぶためなどの自身のスキルアップにかかった費用の一部を支給してくれる制度です。会社に1年以上勤めていれば、失業中のときだけでなく、在職中でも給付が受けられます。
厚生労働大臣指定となっている専門学校や各種スクール、通信教育などが対象です(対象の講座は、ハローワークや厚生労働省のウェブサイトで確認できます)。
教育訓練給付は、「一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の2種類あります。それぞれ条件は違いますが、どちらも仕事のスキルアップを図るためです。専門実践教育訓練は、MBAなどに挑戦できる専門性の高いもの。チャレンジしてみるのもいいですね。
「1.技能取得手当」「2.公共職業訓練」も教育訓練給付金と同様に、資格取得などにかかった費用をバックアップする制度で、こちらは原則として無料で受講することができます。ただし、失業中の人のみが対象です。
問題3
答えは1.住民税です。
住民税は、前年の1年間の所得に対する税金で、失業中で収入がなくても基本的に免除などはしてもらえません。
会社に勤めているときは、住民税は毎月のお給料から天引きされています。会社を辞めると自分で支払うことになります(納税通知書が自宅に送られてきます)。失業して再就職をするのが次の年になりそうであれば、あらかじめ住民税の資金を用意しておかなければなりません。
ただし、生活保護法による扶助を受けることになったとき、大きな地震などの災害があったとき、などは免除してもらえる可能性があります。
「2.所得税」は、収入がないときは払う必要はありません。「3.法人税」は法人に対する税金で個人には課税されません。
雇用保険の役割は大きい
働く人のうち「1週間の所定労働時間が20時間以上」で「31日以上働く見込みがある」人は、雇用保険に加入します。給与明細をみると、毎月雇用保険の保険料が天引きされていますよね。
下の図は、雇用保険の概要を示したものです。
雇用保険制度の概要

このように、育児休業や介護休業の給付金も雇用保険から給付されます。
失業保険や教育訓練給付金以外にも、雇用保険は働く人のセーフティーネットとして大切な役割を担っているのです。
失業保険はいつからもらえる?
失業保険は、雇用保険の代表的な給付のひとつです。
給付額は、退職前6ヶ月間の給料の平均日額をもとに計算されます(上限と下限があります)。給付される日数は、年齢と勤続年数によってそれぞれ異なります。
また、退職理由により、失業給付(基本手当)が受けられる最初の日が違います。自己都合での退職の場合は、7日+約3ヶ月程待たなければ認定が受けられませんが、会社が倒産したり解雇されたりした場合(会社都合)、7日待って失業の認定を受ければ認定日までの分が振込まれます。
失業手当の受給期間

失業したときの手続きは?
会社から「離職票」をもらい、ハローワークへ行きましょう。求職の申し込みをすることで、失業保険を受けるための手続きができます。会社を辞めると、厚生年金や健康保険からも脱退することになります。近くの市区町村役所へ行き、国民年金と国民健康保険の手続きをしましょう。
健康保険には「任意継続被保険者」という制度があり、2ヶ月以上加入していた人が退職日から20日以内に手続きをすれば、勤めていた会社の健康保険に2年間引き続き加入することができます。会社に勤めていたとき、保険料は会社との折半ですが、任意継続の場合は全額自己負担となります。国民健康保険と健康保険は、保険料と給付内容が異なります。両方を比較して条件の良い方を選びましょう。
次に年金ですが、会社に勤めているときは厚生年金に加入し第2号被保険者でした。退職後は第1号被保険者(配偶者の扶養になれる場合は第3号被保険者)になります。種別変更の手続き先も市区町村役所です。
会社に勤めていたときは、会社が手続きを行ってくれていました。退職後はすべて自分で行います。手続きもれなどで、保障や給付を受けられなくなることもあります。忘れずに手続きをしましょう。
クレジット
イラスト/いいあい
プロフィール
井戸 美枝(いど・みえ)
井戸美枝事務所代表
講演のほか、TVやラジオなどへの出演を通して資産運用やライフプランについてのアドバイスを行う。経済エッセイストとしても活躍。『マンガでまる分かり! 申請するだけでもらえるお金』(幻冬舎)など著書多数。
この記事は、日経ウーマンオンライン(http://wol.nikkeibp.co.jp/)に 2016年6月8日に掲載されたものです。無断複製・転載を禁じます。(C)日経BP社