時代は貯蓄から投資へ 資産運用とお金のはなし
資産運用ってなんだろう? そんな人、必見です。
定期預金に預けておくだけで、お金を増やすことができた時代から、今は投資の時代へと変わりつつあります。そろそろボーナス時期。将来のために、知っておくのは損ではないですよ。
みなさんこんにちは、経済エッセイストの井戸美枝です。お金にまつわる“知っておきたい、ちょっといい話”、第7回は「貯蓄から投資へ 資産運用とお金」についてお話しましょう。
夏のボーナスが話題に上る時期になってきました。欲しかったものを買ったり、はたまた貯金する方もいらっしゃるでしょう。
みなさんは、貯めたお金をどのように管理していますか? かつては定期預金に預けておくだけで、お金を増やすことができました。
たとえば、1990年の郵便局(現 ゆうちょ銀行)の3年以上の定期預金の金利は6.33%。100万円を預けると、3年後には約120万円にもなったのです。残念ながら、今は金利が0.01%と低く、100万円を3年間預けても利息は300円程度が相場です。
そこで「投資」による資産運用に注目が集まっています。ニュースや新聞などで「NISA」や「ジュニアNISA」「確定拠出年金」といった言葉を目にした方もいらっしゃるかもしれません。
「NISA」は、年間投資額に限度がありますが運用益が非課税。「確定拠出年金」は、60歳以降まで引き出すことができませんが、所得控除も使えて運用益が非課税です。特に「確定拠出年金」は税制上とても有利な制度です。利用しない手はありません。
今回は「貯蓄から投資へ」をテーマに、資産運用のお話ししましょう。
それでは、資産運用にまつわるお金のキホンチェック! クイズに答えてみてくださいね。
問題1
2016年5月現在の定期預金(1年)の金利は、おおよそどれくらいでしょうか?
1.0.01%
2.0.5%
3.3.1%
問題2
NISA口座で運用して得た利益には税金がかかりませんが、投資できる額には上限があります。1年間の投資の上限額はいくらでしょう?
1.100万円
2.110万円
3.120万円
問題3
2017年1月、20歳以上であれば誰でも加入できるようになる制度はどれでしょう?
1.個人型確定拠出年金
2.企業型確定拠出年金
3.ジュニアNISA
答えあわせをしてみましょう!
問題1
答えは1.0.01%です。
2016年5月現在、大手の銀行の定期預金(1年)の金利は、ほぼ横並びの0.01%となっています。100万円を1年間預けると、10円の利息がつく計算です。10円の利息に対して3円の税金がかかりますので、7円が私たちの利益となります。(復興特別所得税除く)これでは、何年も銀行口座に預けていても、お金は増えないことが分かりますよね。引き出す際の手数料がかかってしまうと、むしろマイナスです。
問題2
答えは3.120万円です。
NISAの別名は「少額投資非課税制度」です。読んで字のごとく、少額(年間120万円まで)の投資で、株式投資や投資信託にかかる値上がり益や配当金(分配金)が非課税となる制度です。
普通の口座(特定口座・一般口座)では、投資などで得た利益には20.315%の税金がかかります。例えば、100万円の株を買って、120万円に値上がりした時に売るとしましょう。売却益は20万円(証券会社などに支払う手数料のぞく)。NISAでは非課税なので20万円受け取れますが、NISAでない場合は15万937円となり、5万円以上の差がでます。しかもNISAは非課税ですから、確定申告も必要ありません。
しかし、NISAにはいくつかの制限があります。
まず、120万円の非課税枠はその年限りしか使えず、余っても次の年に繰り越すことはできません。そして、1度売却すると非課税枠を使ったことになります。
期間についての制限もあります。買った株の売却益や配当金が非課税になる期間は、買った年を含めて5年間です。例えば、平成27年1月や平成27年8月に買った株は、平成31年12月までしか非課税で運用できません。5年以内に売却しなければ課税される、ということですね。
また、NISAは2014年に制度が始まっており、2023年までの10年間、毎年新たに120万円の非課税枠が追加されます。非課税枠を使っての投資総額は合計600万円(5年分)までとなっています。
非課税の期間はそれぞれ5年間です。5年間の非課税期間を終えると、投資元本を翌年の新規非課税枠内で引き継ぐことができます。非課税枠を超えた部分は時価で、特定/一般口座に移され、課税されます。
問題3
答えは1.個人型確定拠出年金です。
確定拠出年金は、皆さんが加入している「国民年金」や「厚生年金」の上乗せ部分となる年金のひとつです。これまでは、自営業者や企業年金のない一部の会社員しか加入できませんでしたが、2017年1月から加入対象者が拡大されます。専業主婦、公務員、企業年金に加入している会社員も、個人型確定拠出年金を利用できるようになるのです。つまり、20歳以上であれば誰でも加入できるようになります(低所得で国民年金の保険料を免除されている人をのぞく)。
確定拠出年金は、NISA以上に税制上有利な制度となっています。ただし、60歳以降しか引き出せない、など注意点も。次のページで詳しく見てみましょう。
時代は貯蓄から投資へ
最初にお話しした通り、現在の資産運用は「貯蓄」から「投資」へとシフトしています。銀行へ預けているだけでは利息がほとんどつかないため、個人がリスクをとって「投資」をする必要が生じているのですね。
確定拠出年金は、個人で運用して(いわゆる「自助努力」)で年金受給額を上乗せし、老後の備えを促すものです。労働人口が減少するなか、国も以前のような社会保障を行う体力がなくなってきていることが背景にあります。
誰でも個人型確定拠出年金
確定拠出年金は、毎月積み立てるお金を自分の判断で運用していきます。具体的には、金融機関や証券会社などがあらかじめ決めた運用商品の中から、運用する商品を自分で選択します。その選んだ商品の運用次第で、将来もらえる年金は違ってきます。
確定拠出年金の最大のメリット
それは掛金の全額が所得控除されるということです。つまり所得税が減るのですね。たとえば、所得税、住民税を合わせて20%の税率が課せられている会社員が、月に2万円の掛金を拠出すると、年間24万円の所得控除、つまり24万×20%=4万8000円の節税となります。運用によって得られた利益も非課税ですので、節税をしながら老後の資金を積み立てられることになります。
ただし、注意点も
まず、株式や投資信託など(リスク資産といいます)を多く購入している場合、運用次第では元本が割れる可能性があります。預貯金や保険商品といった元本が保証されているタイプの商品を取り入れることで値動きによるリスクを少なくできます。
次に、積み立てた資産は原則として60歳まで受け取ることができません。
何か不慮の事態で資金不足になった場合も、残高が50万円以下など非常に限られた場合を除きお金を引き出せません。
ただ、確定拠出年金はあくまでも老後の資金の積み立てが目的ですので、これはメリットといえるかもしれません。したがって、掛け金は無理のない金額に設定した方が良いでしょう(5000円以上、1000円単位で自分で設定できます)。
もしも、掛け金の支払いが厳しい場合には、年に1度、掛金額の見直しをすることができます。一時的に掛け金を払うことをストップすることも可能です。
クレジット
イラスト/いいあい
プロフィール
井戸 美枝(いど・みえ)
井戸美枝事務所代表
講演のほか、TVやラジオなどへの出演を通して資産運用やライフプランについてのアドバイスを行う。経済エッセイストとしても活躍。『マンガでまる分かり! 申請するだけでもらえるお金』(幻冬舎)など著書多数。
この記事は、日経ウーマンオンライン(http://wol.nikkeibp.co.jp/)に 2016年6月22日に掲載されたものです。無断複製・転載を禁じます。(C)日経BP社